染織の豆知識
経(たて)糸と緯(よこ)糸が組み合わさって、布に織り成される。先染めはこの織りの段階前に模様をあらわすために糸を染めることをいい、後染めは織り上がった布に模様を染めることをいう。織の組織の種類としては、経糸と緯糸が1本ずつ交差した平織りが一番一般的。羽二重、綴れ、紬などがそうだ。ほかに綾織(斜文織)、繻子織、綟(もじ)り織(溺み(からみ)織)などがあり、織物はこの四原則、或いはその変形によって成り立っている。
紋織
織物は無地織物と紋織(模様織)に大きく分かれる。
経糸で模様を表わす絣などは平織りだが、緯糸に模様を織りだす絵緯、文様を浮織のように表現する縫取織など様々な技法がある。さらに複雑な文様を織り成すために、経糸、もしくは緯糸に色糸を加え高機の上に櫓やぐらを組んで人が乗り、織り手に合わせて経糸を引き上げる空引機が考案された。これは明治時代に輸入されるジャカード織機以前の機である。
西陣織
名前は応仁の乱のとき、西軍の山名宗全が本陣を置いた地名にちなむ。乱の後、職人たちが西陣の跡地に帰還し、京織物を再興した。秦氏ゆかりの絹織物集団「大舎人(おおとねり)座」が将軍家直属の絹織物の生産所として「西陣織」へと発展させた。その範囲は上京区、北区(北は北大路通、南は今出川通、西は千本通、東は堀川通)に及ぶ。綴機で織る綴織だが、経糸を杼(ひ)ですくって緯糸を爪で掻き寄せて文様を織る、爪掻き(つめかき)本綴れ織りが独特の技法である。西陣織といえば帯が有名だが、それ以外で有名なのが舞台幕である緞帳。西陣織の重厚感と鮮やかな色彩が各地の舞台を飾っている。
高校野球の優勝旗も西陣織の場合が多い。祇園祭の見送り幕も西陣織(復元品など)。山鉾の豪華な雰囲気を盛り上げている。
各地の織物
日本各地でその風土や素材に合った染織品が織られていた。沖縄の芭蕉布(ばしょうふ)はイトバショウから採取した繊維で織った布。大宜味村喜如嘉(きじょか)の芭蕉布は国の重要無形文化財。静岡県の葛布(くずふ)、山形県の科布(しなぬの)と併せて三大古代布という。まだ流通が発達していない時代、一家の主婦が農閑期に糸を紡ぎ、染め、家族の着物を織った。木綿の普及とともに、江戸時代になると紡いだ糸は町内にある紺屋(こうや)(藍染屋)に持って行って染めてもらうのが一般的になった。絣にするときは、糸を小切れで括ってその部分が染まらないように防染した。福岡県の久留米絣、愛媛県の伊予(いよ)絣、広島県の備後絣は日本三大絣といわれる。いずれも紺絣だ。上布は極細い麻糸で平織りした麻織物。沖縄の宮古上布、滋賀県の近江上布、新潟県の越後上布を日本三大上布といい、越後上布は重要無形文化財。織成館などの施設で全国の染織史料を観ることができるのも京都ならではである。
西陣織会館 西陣織の帯